暖房をつけている時間は前の冬と同じなのに、検針票の金額だけが増えていて、思わず二度見したことはありませんか?
器具のワット数が大きすぎるのだと考える人も多いはずです。ところが、ワット数の小さい器具に替えても、請求はワット数の差ほどには下がりません。
ワット数は、器具が1時間動いたときに使う電気の目安です。器具は、ずっと同じ強さで動くわけではありません。部屋が冷えれば強く動き、暖まれば弱まります。
器具が強く動くのは、部屋の熱が壁や窓から外へ逃げていくからです。
暖房費を下げるカギは、器具のワット数ではなく、熱が逃げる窓と、暖める範囲です。
この記事はこんな方に向けて書いています
- 暖房をつけている時間は前の冬と同じなのに、請求が増えた
- ワット数の小さい器具に買い替えたのに、請求が減らなかった
- 窓とドアと器具の、どこから手をつけるかを決めたい
- 天井が高い部屋で、暖房器具の畳数をどう見るかを知りたい
ワット数から出せるのは、電気代の目安までです
商品ページでいちばん目につくのが、消費電力のワット数です。1,200ワットの器具を1時間つけると、1.2キロワットアワーの電気を使います。1キロワットアワー31円(全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価)なら、1時間で37円です。
ひと月の金額は、次の式で出します。
ワット数 × 1日の時間 × 日数 ÷ 1000 × 31円
1,200ワットを1日8時間、30日つけると、8,928円になります。
ただし、この金額は、表示のワット数のまま8時間動かしたときの目安です。実際の器具は、部屋が冷えているあいだは強く、暖まれば弱く動きます。どれだけ強く動くかは、商品ページのどこにも書いてありません。置いた部屋から熱がどれだけ逃げるかで決まります。
つけている時間が同じでも、請求は増えます
まず、検針票の請求額を、使用量のキロワットアワーで割ってください。1キロワットアワーあたりの金額が出ます。前の冬の検針票でも同じように計算して、2つを並べてください。1キロワットアワーあたりの金額が上がっていれば、使った電気の量が同じでも請求は増えます。
1キロワットアワーあたりの金額が同じなら、増えたのは器具が使った電気の量です。
エアコンの商品ページに並ぶ暖房の消費電力は、「最小〜定格〜最大」の3つです。寒い日は定格より強く回る時間があり、暖まれば最小まで落ちます。
外が寒い日は、暖めたそばから逃げていく熱の量が多くなります。暖房を入れてから切るまでが同じ8時間でも、強く回っている時間が延びるのはそのためです。
同じ家で同じ8時間つけても、熱が逃げる速さが上がれば、請求は増えます。
部屋の空気だけなら、暖めるのは3円ほどです
では、器具が使う電気のうち、部屋の空気を暖めるのにかかるのはどれくらいでしょうか。
空気を暖めるのに使う電気は、多くありません。1立方メートルの空気を1度上げるのに要る電気は、0.0003キロワットアワーほどです。
天井の高さが2.4メートルの8畳なら、空気はおよそ31立方メートルあります。この空気を10度上げても、0.0003×31×10で約0.1キロワットアワーです。31円の単価なら3円で、1,200ワットの器具が5分で出せる量です。
ところが、ひと月の請求は何千円にもなります。
暖めた熱が、壁と窓と天井を通って外へ出ていくからです。器具は、出ていった熱を足し直すために、つけているあいだ回り続けます。
請求の大半は、はじめに暖めた3円ではなく、逃げた熱を足し直した電気です。
逃げる熱を減らす手は、窓と、暖める範囲の2つです
熱は、部屋を囲む壁・床・天井・窓から逃げていきます。
この中で、いちばん熱を通すのが窓です。壁と天井には断熱材が入っていることが多いのに、窓はガラスとサッシだけでできています。
逃げる熱を減らすもう1つの手は、暖める範囲を小さくすることです。ドアを開けて隣の部屋まで暖めると、隣の部屋の壁と窓も、熱の出口に加わります。範囲を小さくすれば、部屋を囲む面も小さくなり、逃げる熱が減ります。
| 順番 | どこに | やること |
|---|---|---|
| 1 | 窓 | すき間をふさぎ、ガラスの前に空気の層をつくる |
| 2 | ドアと囲い | 暖める範囲を小さくする |
| 3 | 器具 | 小さくした範囲に合う器具を選ぶ |
手をつける順番は、窓、ドアと囲い、器具です。どの部屋を暖めても、その部屋の窓からは熱が逃げます。だから窓が先です。器具は、暖める範囲が決まってからでないと選べません。
逃げる熱の58%は、窓と玄関から出ていきます
冬に家から逃げていく熱のうち、58%は窓や玄関などの開口部から出ていきます(日本建材・住宅設備産業協会)。
窓の手当ては、次の3つです。どれも、仕切るドアのないワンルームでもできます。
- すき間テープでサッシの合わせ目をふさぐ … 外の冷たい風が入る道を閉じます
- 断熱シートを貼る … ガラスの前に空気の層ができます。貼れないガラスもあるので、見分け方は窓の結露の記事にまとめました
- 床まで届くカーテンを掛ける … 窓で冷えた空気は下へ落ち、床を這って足元へ流れてきます。床まで届くカーテンは、その流れを窓ぎわで受け止めます。丈と幅の測り方は断熱カーテンの記事にあります
選ぶときに見る点は、冬の困りごとと解決グッズに並べてあります。
窓から逃げる熱が減れば、設定温度はそのままでも、器具が強く回る時間は短くなります。
ドアと囲いで、暖める範囲を小さくします
暖める範囲は、部屋ぜんぶ、人のまわり、体のまわりの順に小さくなります。
ドアと入り口を閉じます
8畳の居間と6畳の台所が、ドアでつながっているとします。ドアを開けたまま暖房をつければ、暖めているのは14畳で、8畳だけのときの1.75倍です。
増えるのは空気だけではありません。台所の壁と窓も、熱の出口に加わります。
階段のある家では、上り口も見てください。1階の暖かい空気は、階段を通って2階へ上がります。ドアのない入り口には、のれんか突っ張り式のカーテンを吊るします。
ドアを閉めるだけなら、お金はかかりません。
人のまわりに、小さな囲いを作ります
机の下やこたつの中、椅子のまわりのように、人のまわりを囲うと小さな部屋になります。幅120センチ・奥行き60センチの机の下なら、床から60センチの高さまでで、中の空気は8畳の70分の1です。
ここまで小さければ、300ワット前後の器具で足ります。デスク下に置く板の形のパネルヒーターは、足の前後を囲って使う前提で作られています。
セラミックヒーターのような温風の器具は、毛布や布で覆わずに使ってください。
体のまわりだけを暖めます
電気毛布と着る毛布は、体にじかにふれて使います。電気毛布が暖めるのは、ふとんと体のあいだの薄い空気だけです。着る毛布は、電気を使わずに、体の熱を逃がしにくくします。
部屋ぜんぶを暖めないと、結局さむいままでは
家の中を動き回ることが多いなら、そのとおりです。体のまわりだけにするのは、すわっている時間が長い場所に限ります。
天井が高い部屋では、畳数を足して見ます
居間のように家族が動き回る部屋は、囲えません。そういう部屋では、部屋ぜんぶを暖める器具を選びます。そのときに確かめるのが、天井の高さです。
エアコンも石油ファンヒーターも、能力は適用畳数(その機種で足りる部屋の広さ)で書いてあります。適用畳数は、標準的な天井の高さ(2.4メートル前後)の部屋を前提にした数字です。
天井が高い部屋では、壁の面が広くなり、暖かい空気がたまる上の空間も増えます。同じ8畳でも、ひとまわり大きい機種が必要です。
この記事では、2.4メートルを基準にして、高さの比で畳数を増やす目安を使います。3メートルの8畳なら、3÷2.4で1.25倍。8畳×1.25で、10畳向けの機種を選びます。
高さは家ごとに違うので、メジャーを床に立てて1回測ってください。吹き抜けや勾配天井の部屋は、いちばん高いところまでを高さにします。
高さって、そんなに差が出るものですか
吹き抜けで4メートルある8畳なら、4÷2.4で約1.7倍。8畳×1.7で13.6畳なので、14畳向けの機種を選びます。
畳数を直さずに買うと、天井の高い部屋ではひとまわり小さい機種になります。設定温度に届かないまま、最大に近い運転が続きます。
天井にたまった暖かい空気を足元へ下ろす手順は、足元だけ寒いときの記事にまとめました。
器具は、暖める範囲で選び分けます
範囲が決まったら、器具を選びます。ここから出す電気代は、1キロワットアワー31円で、表示のワット数のまま1日8時間・30日動かしたときの目安です。
部屋ぜんぶ … エアコン
エアコンは、電気を熱に変えるのではなく、外の空気から熱を運ぶ作りです。同じ1キロワットアワーで出せる熱が、電気ストーブより多くなります。
適用畳数は、木造と鉄筋の2つが並んでいます。造りが分からないときは、小さいほうの木造の数字を見てください。天井の高い部屋では、さきほど直した畳数向けの機種を選びます。
定格の暖房消費電力が730ワットの6畳向けエアコンなら、1時間でおよそ23円、ひと月で5,431円です。寒い日は定格より強く回る時間があり、暖まれば最小まで落ちます。
机の下の囲い … デスク下のパネルヒーター
足の前後を板で囲んで、囲いの中だけを暖めます。300ワットなら、1日8時間・30日でひと月2,232円です。机の下に置く折りたたみの1台がデスク下に置く折りたたみのパネルヒーターです。
ふとんの中・体のまわり … 電気毛布と着る毛布
電気毛布は、体にふれる面だけを暖めるので、部屋の広さと関係がありません。消費電力を50ワットとすると、ひと月372円です。敷いても掛けても使える型の1つが切タイマー付きの掛け敷き兼用の電気毛布です。
低い温度でも、同じ場所に長くふれていると低温やけどになります。切タイマー(決めた時刻に自動で止まる機能)のあるものを選んで、寝入るころに切れるようにしてください。
着る毛布は、体とのあいだに動かない空気の層をつくる作りで、電気代は0円です。すわっている時間が長い場所に向きます。電気を使わない1枚が電気を使わない着る毛布(LOWYA グルーニー)です。
脱衣所 … セラミックヒーター
スイッチを入れてすぐ温風が出るので、脱衣所のように短く使う場所に向きます。1,200ワットでも、10分なら1回6円ほどです。強と弱の2段に切り替えられる型の1つが出力を2段に切り替えられる人感センサー付きセラミックヒーターです。
人がいなくなると止まる人感センサー付きなら、消し忘れても回り続けません。
6畳ぜんぶを強の1,200ワットで8時間暖めると、ひと月8,928円です。6畳向けエアコンの約1.6倍になるので、部屋ぜんぶを暖める使い方には向きません。
ひと月の電気代を、同じものさしで並べます
前の節の金額を、1枚の表にまとめます。どれも、表示のワット数のまま1日8時間・30日動かしたときの目安です。
| 暖めているもの | 器具 | ワット数 | ひと月(8時間×30日) |
|---|---|---|---|
| 体とのあいだの空気 | 着る毛布 | 0ワット | 0円 |
| ふとんの中 | 電気毛布 | 50ワット | 372円 |
| 机の下の囲い | パネルヒーター | 300ワット | 2,232円 |
| 6畳の部屋ぜんぶ | 6畳向けエアコン(定格) | 730ワット | 5,431円 |
上から下へ、暖めているものが大きくなるにつれて、電気代も上がります。部屋ぜんぶ(エアコン)とふとんの中(電気毛布)では、約15倍の差です。
暖める範囲が小さいほど、必要な熱も小さくなります。
やりがちな間違い
ワット数の小さい器具に買い替える
1,200ワットを700ワットにすると、1時間あたりの金額は6割ほどになります。ただし、同じ部屋を同じ温度まで暖めるなら、強く回る時間が延びます。出せる熱が減っても、逃げる熱は減らないからです。
器具を小さくして請求が下がるのは、先に暖める範囲を小さくして、小さいワット数で足りるようにしたときです。
設定温度を下げて、窓とドアはそのままにする
エアコンの暖房を21度から20度にすると、年間で約53キロワットアワー、31円の単価でおよそ1,650円の電気代が減ります(資源エネルギー庁 省エネポータルサイト。外気温6度・1日9時間の試算)。
設定温度を1度下げること自体は、やってよい対策です。ただ、ドアを開けて14畳を暖めているなら、1度下げても14畳ぶんの壁と窓から熱は逃げ続けます。先にドアを閉めて8畳に戻し、それから設定温度を下げてください。
よくある質問
Q. ワンルームで、閉めるドアがありません。どうしますか?
人のまわりの囲いと、体のまわりを暖める器具で、範囲は小さくできます。窓の手当ては、ドアがなくてもできます。
Q. こたつがあれば、暖房費は下がりますか?
こたつを足すだけなら、そのぶん上がります。下がるのは、こたつに入っているあいだ、エアコンを切ったときです。こたつを200ワット、エアコンを730ワットとすると、1時間あたり約6円と約23円です。切り替えれば、1時間に16円ほど減ります。
Q. 適用畳数に余裕のある機種を買うと、電気代が上がりませんか?
同じ部屋を同じ温度にするなら、電気代が大きく上がることはあまりありません。余裕のある機種は、設定温度に届いたあと最小の運転へ落ちます。畳数の足りない機種は、届かないまま強い運転を続けやすくなります。余裕のある機種で確実に高くなるのは、本体の値段です。
まとめ
- ワット数から出せるのは、電気代の目安までです。実際の請求は、器具がどれだけ強く回ったかで決まります
- 8畳の空気を10度上げるのは約3円。請求の大半は、逃げた熱を足し直した電気です
- 逃げる熱の58%は窓や玄関に集まります。手をつける順番は、窓、ドアと囲い、器具です
- 隣の部屋へのドアを開けていると、暖める範囲は1.75倍。閉めるのにお金はかかりません
- 天井の高い部屋は、高さを2.4で割って畳数にかけ、その畳数向けの機種を選びます
- 暖める範囲が小さいほど、必要な熱も小さくなります。1日8時間・30日の目安で、6畳向けエアコンは5,431円、電気毛布は372円。約15倍の差です
今夜、暖房をつけている部屋で、開いたままのドアがないか見てください。サッシの合わせ目に手をかざして、冷たい風が来ないかも確かめてください。どちらも、器具を買い替える前にできることです。
冬のほかの困りごと(窓の水滴、足元の寒さ、肌と喉の乾き)は冬の困りごとと解決グッズにまとめています。
この記事で挙げたものを、もう一度並べます。
商品は楽天で探して、★4.3以上のものを、レビューの多い順に並べています。 ★の数も価格も、売り切れかどうかも日ごとに書き替わります。押した先の商品ページで、いまの表示を確かめてください。
この話で使える便利グッズを、まとめて見る
- 冬の困りごと:暖房費が上がる
加湿器を強くすると窓が濡れ、窓の水滴を減らそうとすると今度は部屋が乾く。冬は、この2つが同じ時期に起きます。
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