まだ半袖で過ごす9月に、朝の洗顔のあとで頬がつっぱったり、ファンデーションが均一に伸びなくなったりしていませんか?夏のあいだは、何もしなくても平気だったはずです。
化粧水が合わなくなったと思って、何本か買い替える人もいるはずです。それでも、つっぱりは同じように出ます。
つっぱりの原因は、化粧品ではありません。肌の壁にできたすき間です。
タイトルの「見る3つ」は、このすき間についての3つです。何が減るのか、なぜ減るのか、どう埋めるのかの順に見ていきます。
この記事はこんな方に向けて書いています
- 9月に入ると、急に肌がつっぱる
- 化粧水を変えても手ごたえがない
- 乾燥なのに、なぜかテカる日がある
何が減るのか(1)肌の壁は、ラップ2枚ぶんほどの厚さです
この記事で「肌の壁」と呼んでいるのは、肌のいちばん外側にある「角層」と呼ばれる層のことです。角層の厚さは0.02ミリで、台所のラップ2枚ぶんほどです。
この0.02ミリの層が、体の水分が逃げるのを止めています。同時に、外から菌が入るのも止めています。
そんなに薄い層で足りるのかと思うかもしれません。足りる理由は、角層の作りにあります。
何が減るのか(2)壁はレンガ、すき間を埋めるのがモルタル
角層の断面は、レンガを積んだ壁に似ています。
レンガにあたるのが、角層の細胞です。平たい細胞が何十層も重なっています。
すき間を埋めるモルタルにあたるのが、セラミドという油の一種です。セラミドは細胞と細胞のあいだを埋めて、壁をすき間なくつないでいます。もともと体の中で作られるものですが、外から塗って足すこともできます。
セラミドが減ると、細胞は積まれたままでも、あいだにすき間ができます。肌の水が抜けていくのは、そのすき間からです。
つっぱるのは、このすき間から水が逃げているからです。減っているのはセラミドで、水そのものではありません。
肌の表面がざらつくと、その上に乗せたファンデーションも均一に伸びません。化粧が決まらない日は、肌がこの状態になっています。
化粧水を塗れば、すき間は埋まりませんか
化粧水は水なので、すき間から同じように逃げます。すき間を埋めるには、油の成分が要ります。
何が減るのか(3)セラミドは、水をつかんで離しません
すき間を埋めているセラミドは、油なのに水を抱えこむという珍しい性質を持っています。
洗剤や化粧品を作っている花王は、肌の研究所を持つ会社です。その花王が、セラミドに抱えられた水はマイナス40度まで冷やしても凍らない、と報告しています。ふつうの水は0度で凍るので、それだけ強くセラミドと結びついているということです。
そのためセラミドが減ると、肌の水はつかまれなくなり、蒸発しやすくなります。足りないのは水ではなく、水をつかむセラミドです。

じゃあ、水を足しても意味がないんですか
セラミドが減ったままだと、足した水も同じように逃げます。化粧水だけで終わらせると、こうなります。
なぜ減るのか、理由は3つあります
ここからは、セラミドが減る理由を見ていきます。
1つめは洗いすぎです。セラミドは油なので、洗顔料で洗うと少しずつ流れます。体の中で作り直されますが、1日に何度も洗うと、作り直す速さが追いつきません。
2つめはお湯の温度です。セラミドは体温くらいで溶けはじめる油で、36度を超えるお湯だと、水をつかんでいたセラミドまで溶けて流れます。お湯の目安は32〜34度です。手を入れて「少しぬるいかな」と感じるくらいで、熱いと感じたら高すぎます。
さきほどの「マイナス40度でも凍らない」は、セラミドがつかんでいる水の話でした。お湯で溶けるのは、セラミドそのものです。水をつかんでいるセラミドが溶けて流れれば、つかまれていた水も一緒に出ていきます。
3つめはこすることです。角層は0.02ミリしかないので、タオルでこすると削れます。コットンで拭き取るタイプの化粧水も、同じように表面をこすります。
秋に増えるのは3つめです。夏のあいだに、汗をふいたりメイクを落としたりで、こする回数が増えます。その習慣が残ったまま、秋は空気が乾きはじめるからです。
なぜ減るのか(続き)“乾燥するのにテカる”も、同じ輪の中にあります
乾燥するのにテカるのは矛盾しているようですが、上の3つとつながっています。
肌の表面には毛穴から出る油の膜があり、この油が皮脂です。
角層の水分が減った状態が続くと、皮脂の量が増えることが知られています。油そのものが水になるわけではありません。表面が油で覆われると、その下の水が逃げにくくなります。皮脂が増えるのは、この働きで水分が減るのを抑えようとする反応だと考えられています。
テカりは、もともと油の多い肌質のしるしとは限りません。肌の中が乾いているせいで出ていることもあります。
ここで「脂っぽいから」と洗う回数を増やすと、上の1つめの洗いすぎに戻ります。洗うとセラミドが減り、肌はもっと乾いて、皮脂がもっと出ます。そしてまた洗う、という輪になります。
テカる日ほど、洗う回数は増やさないほうが早く落ち着きます
どう埋めるのか(1)成分は3つに分かれます
ここからは、すき間の埋め方です。売り場で見る成分は、3つに分かれます。
その前に知っておきたいのが、市販薬の区分です。市販薬には第1類医薬品・第2類医薬品・第3類医薬品という区分があります。これは、数字が大きいほど副作用の心配が小さくなる区分のことです。第1類は薬剤師のいるカウンター越しに渡され、第2類と第3類は棚に並んでいることが多い、という違いもあります。
| 成分 | どういうものか | どこで買うか |
|---|---|---|
| セラミド | すき間を埋めていたモルタルそのものを足す | 化粧品 |
| ヘパリン類似物質 | 体の中にあるヘパリンという成分に似せて作ったもの。ヘパリンには水を抱えこむ性質があり、肌にはこの性質を使います | 第2類医薬品/医薬部外品 |
| 尿素 | 硬くなった角層の細胞の結びつきをゆるめて、やわらかくする | 第3類医薬品 |
顔の乾燥に使うのは、上の2つです。
尿素を外したのは、尿素が角層をやわらかくする成分で、かかとやひじのように厚く硬くなった場所に向いているからです。顔の皮膚は体より薄いので、同じ濃度だとしみるように感じることがあります。顔に使うなら、顔用として売られているものを選んでください。かかと用の10〜20%のものは、顔には使いません。
いま乾いてつっぱっているなら、ヘパリン類似物質が向いています。ヘパリン類似物質というのは、体の中にあるヘパリンに似せて作った、水を抱えこむはたらきの成分のことです。医薬品として承認されているものは、厚生労働省から「肌がかさついて粉をふく状態(乾皮症)」に対する効能で承認を受けています。こちらは薬剤師や登録販売者のいる売り場にあり、1本1,000〜2,000円あたりです。
同じ成分は、医薬部外品としても売られています。ヘパリン類似物質を配合した化粧水・乳液のオールインワンのように、1本で済むタイプです。ただし医薬部外品は医薬品ではないので、パッケージに「乾皮症に」とは書けません。書けるのは「肌あれ・あれ性」「皮膚の乾燥を防ぐ」の範囲です。症状として困っているなら医薬品の棚、毎日の手入れなら医薬部外品の棚から選びます。
これから冬に向けて備えるなら、セラミド入りの化粧品を毎日使ってください。減った分を毎日少しずつ足していけば、つっぱりが出てから薬を探しに走らずに済みます。セラミド配合の化粧水のように評価の高いものもありますが、毎日使うものなので、大容量タイプのように量で選ぶ手もあります。成分名を比べるより、続けられる価格かどうかを見て選んでください。
同じ「保湿」でも、薬の棚と化粧品の棚に分かれるんですね
はい。どちらが上ということはありません。いま乾いているかどうかで選びます。
どう埋めるのか(2)化粧水だけで終わらせると、塗る前より乾きます
塗る順番にも理由があります。
化粧水は、ほとんどが水です。塗った直後は肌が濡れているので、しっとりします。
ところが、そのまま放っておくと塗った水は蒸発します。表面の水が蒸発しきったあとも、肌は乾いた空気にふれたままです。乾いた空気にふれているかぎり蒸発は続くので、今度は角層の中に残っていた水が引き出されます。塗る前より乾くのは、このためです。
そこで、化粧水の上にフタをします。乳液かクリームを重ねて、空気にふれる面を油で覆ってください。
塗るのは洗顔後すぐ、数分以内が目安です。洗ったあとの肌は皮脂の膜が落ちていて、いちばん水が逃げやすい状態だからです。
どう埋めるのか(3)部屋の湿度で、水を逃がしにくくします
ここまでの塗る手入れは、肌に足すための手当てでした。もうひとつ、部屋の湿度を整えれば、肌から水を逃がしにくくできます。
肌から水が逃げる速さを左右するのは、まわりの空気の乾き具合です。湿度が40%を下回ると、逃げる速さが上がります。
ただし、湿度は高すぎてもいけません。70%を超えると、結露とカビが出てきます。
家で目指すのは、40〜70%の内側にある50〜60%です。下限を50%にするのは、家庭用の湿度計が±5%ほどずれるからです。表示が40%の部屋が、実は35%だったということも起こります。
上限を60%にするのは、同じ部屋の中でも場所によって湿度に差が出るからです。気温が下がると空気がふくめる水の上限も下がるので、冷えた窓ぎわは部屋の真ん中より湿度が高くなります。真ん中で70%なら、窓ぎわは100%に届いて結露します。
空気が乾きはじめるのは9月からです。天気予報の「湿度◯%」は、9月も75%前後で下がりません。ただ、この数字は「その気温で空気がふくめる水の上限に対する割合」です。気温が下がれば上限そのものが小さくなるので、割合が同じでも空気中の水は減ります。東京の平年値で見ると、空気1立方メートルにふくまれる水は8月の約19グラムから、9月に約16グラム、10月に約11グラムへ減ります。
加湿器の選び方は、秋の乾燥の記事にまとめました。
どう埋めるのか(4)食べもので足せるのは、セラミドの材料です
こんにゃく・米・小麦・大豆にも、植物が持っているセラミドが含まれています。
ただし、食べたセラミドがそのまま肌のすき間へ運ばれるわけではありません。口から入ったものは消化されて細かく分解されるので、肌に届くのは材料としてです。体はその材料からセラミドを作り直すので、塗るのと違って時間がかかります。
こんにゃく由来のものは、機能性表示食品として「肌の水分を逃しにくくする」という届出がされています。機能性表示食品というのは、事業者が自分の責任で根拠を届け出れば、体への働きを書ける食品の区分のことです。国が個別に審査して承認する制度ではない、という点は知っておいてください。
食べてすぐに変わるものではありません。乾燥の手当ては塗るほうを中心にして、食べものは補助にとどめてください。
よくある質問
Q. セラミド入りと書いてあれば、どれでも同じですか?
セラミドの配合量は書かれていないことが多いので、量では比べられません。ただし化粧品には、入っているものを全部書いた全成分表示の一覧を、容器か箱に載せる決まりがあります。並び順は配合量の多い順で、1%以下のものは順不同です。その一覧の前のほうにセラミドの名前があるかどうかが、ひとつの手がかりになります。
「セラミドNP」「セラミドAP」のように種類の記号まで書いてあれば、どのセラミドを使っているかが分かります。NPやAPは構造の違いを表す記号で、どれが上ということはありません。
Q. ヘパリン類似物質は、顔に使えますか?
ヘパリン類似物質の製品には、顔に使えるものと体用のものがあります。どちらかはパッケージの「効能・効果」の欄に書いてあるので、確かめてから使ってください。判断に迷うときは、薬剤師さんに聞くのが確実です。
Q. 洗顔は1日何回までですか?
朝と夜の2回が目安です。汗をかいた日は水かぬるま湯だけで流し、洗顔料は増やさないほうが肌は落ち着きます。
Q. 化粧水は高いほうがいいですか?
値段より、化粧水のあとにフタをしているかどうかで差が出ます。1本30mLを朝晩0.5mLずつ使うと30日で終わるので、続けられる価格かどうかで選ぶのが現実的です。
Q. つっぱるのに、皮がむけてきました。どうすればよいですか?
皮むけは、壁が削れているサインです。まず、洗う回数とお湯の温度を下げてください。1週間たっても皮むけが引かないときは、自分の判断で角質ケアに進まず、皮膚科で相談するのが安全です。角質ケアとは、古い角質を酸や粒で落とす手入れのことです。削る手入れに進むと、薄くなった壁がさらに薄くなります。
Q. 赤みやかゆみが出ています。これも乾燥ですか?
この記事で扱った「壁のすき間」の話は、つっぱりや粉ふきまでです。赤みやかゆみは、そこに炎症が加わった状態です。かゆみや湿疹が出ているなら、待たずに皮膚科へ行ってください。くわしくは肌あれのページに分けてまとめました。
まとめ
- 何が減るのか。肌の外側の角層は0.02ミリ。レンガの壁にたとえると、すき間を埋めるのがセラミド
- セラミドが減ると、すき間から水が逃げる。足りないのは水ではなく、水をつかむセラミド
- なぜ減るのか。洗いすぎ・お湯の温度・こすることの3つで、秋に増えるのは3つめ
- 乾燥するのにテカる日も、同じ輪の中にある。洗う回数を増やさない
- どう埋めるのか。いま乾いているならヘパリン類似物質、備えるならセラミドの化粧品
- 化粧水のあとにフタをする。洗顔後すぐ、数分以内
- 部屋の湿度は50〜60%。天気予報の湿度が下がらなくても、空気の中の水は9月から減る
- 食べもので届くのは材料まで。塗る手入れを中心にして、こんにゃく・米・小麦・大豆は補助に
今夜は、洗顔のお湯を32〜34度まで下げるところから始めてみてください。
この記事で挙げたものを、もう一度並べます。
商品は楽天で探して、★4.3以上のものを、レビューの多い順に並べています。 ★の数も価格も、売り切れかどうかも日ごとに書き替わります。押した先の商品ページで、いまの表示を確かめてください。
この話に出てきた化粧品を、まとめて見る
- 乾燥に使うもの、選び方
読み終わると、足りないのが水なのか、水をつかむ脂(セラミド)なのかが分かります。化粧水のほかに何を買い足すかも決まります。 - 肌あれに使うもの、選び方
読み終わると、いつもの化粧水が急にしみるときは、先に肌の側を疑えばよいと分かります。荒れている間にやめる化粧品も決まります。
リンク先は、どちらも広告を含むページです。