初夏にしまったニットを秋に取り出して広げたら、いちばん気に入っていた1枚の袖に、小さな穴が3つあいていたことはありませんか?
しまう日に、ケースへ虫よけをちゃんと入れていた人も多いはずです。それでも袖に穴があくと、薬の量が足りなかったと考えて、翌年は個数を増やしたくなります。
薬を増やす前に手をつけるのは、服に残っていた汚れです。
穴があく原因は、秋に取り出した日ではなく、しまった日にあります。そのため、秋の衣替えでやることは2つです。ニットを出すときに穴がないかを見ることと、入れかわりにしまう夏物を次の年に同じ目にあわせないことです。
夏物でも、綿や化繊でも、皮脂が残っていれば同じように食われます。ここから先は、服をしまうときの手順を説明します。
この記事はこんな方に向けて書いています
- しまっておいたニットを出したら、穴があいていた
- 防虫剤を入れているのに穴があく理由を知りたい
- 衣装ケースの選び方と、虫よけの置き場所で迷っている
まず、穴をあけているのは飛んでいる虫ではありません
服をかじっているのは、部屋を飛びまわっている虫そのものではなく、卵からかえった幼虫です。幼虫は、ヒメマルカツオブシムシやイガ、コイガと呼ばれる虫の子どもです。大きさは数ミリで、白っぽい毛の生えた小さな芋虫のような姿をしています。
親の虫は服を食べません。ふだんは外の花のまわりで暮らし、卵を産むときに家の中へ入ってきます。
服を食べるのが幼虫なので、殺虫剤は当てになりません。飛んでいる親を落としても、すでに産みつけられた卵まで薬が届かないからです。そのため、やることは2つです。卵を産ませないことと、かえった幼虫を寄せつけないこと。
虫よけの薬が「防虫剤」という名前なのも、幼虫を殺すためではなく、寄せつけないための薬だからです。
タンスの中で虫がわいた、ということでしょうか
卵は、取り込んだ洗濯物や開けた窓から入ってきます。親の虫が卵を産みつけるのは、汚れの残った服です。
食べられるのはウール・カシミヤ・シルク。化繊も無傷ではありません
幼虫の食べ物になるのは、ウール、カシミヤ、シルク、羽毛といった動物からとれる繊維です。どれもタンパク質でできているので、繊維そのものが幼虫の栄養になります。皮脂や汗、食べこぼしが残っているところは、とくに食われやすくなります。
ポリエステルやアクリルなどの化学繊維は、石油から作られた糸です。そのままでは栄養にならないので、幼虫は食べません。
ところが、化繊のシャツにも穴はあきます。
化繊のシャツで幼虫が食べているのは、糸の上に残った汗と皮脂、それに食べこぼしのしみです。幼虫は表面の汚れを食べる途中で、糸を噛み切ります。そのため、栄養にならない化繊の糸にも穴があきます。
襟と袖口に穴が多いのも、同じ理由です。襟と袖口は、着ているあいだ肌にいちばん長くふれる場所です。皮脂が移りやすく、洗っても落ちきらないまま糸のあいだに残ります。
しまう前に服を一度洗っておくと、幼虫の食べ物を先に落とせるので、次に出したときの穴の数が減ります。
しまう前の洗いと乾かしで、来年の穴は減ります
しまう前の洗濯で、ふだんの洗濯と手順を変えるのは2か所です。汚れを落とす場所と、乾かし方です。
襟と袖口は、先に部分洗い
皮脂は水になじまないので、洗濯機で服を回すだけでは、袖口に付いた皮脂が残ります。
そこで、洗濯機に入れる前に、洗剤を汚れに直接つけます。洗剤は、油を水になじむ形に変えて落とすものです。直接つけた洗剤はうすまっていないので、この働きが強く出ます。
部分洗い用の洗剤を襟と袖口へ塗り、5分ほど置いてから洗濯機へ入れてください。塗ったところの油が水へ移るので、あとは通常のコースで流れていきます。手間は1枚あたり1分ほどで、しまう前の1回だけで済みます。
一度着ただけのニットも、同じ扱いにしてください。見た目にしみが出ていなくても、皮脂は付いています。
干しただけの服は、繊維の奥がまだ湿っています
洗って干した服は、表面がさらりとしていれば乾いたように感じます。ところが厚手のニットは、糸が何重にも編み込まれているので、中心の水分が最後まで抜けません。
湿ったままの服をケースへ入れると、湿気がケースの中にこもったまま逃げられません。服に卵が付いていた場合、卵は乾いた場所より湿った場所のほうが多くかえります。ケースに閉じ込めた湿気で、虫の数が増えることになります。
干し終えたあと、風の通る部屋に服をもう半日ぶら下げておくか、晴れた日の午後に1時間ほど陰干しを足してください。どちらかで、ニットの芯まで乾きます。
クリーニングから戻った服は、ビニールのカバーを外す
クリーニングに出した服は、そのまましまってはいませんか?
クリーニング店から戻る服には、うすいビニールのカバーがかかっています。このカバーは店から家へ運ぶあいだのほこりよけで、保管用ではありません。カバーをかけたまま服をしまうと、内側にこもった水分が抜けなくなります。
カバーを外して、服はハンガーごとクローゼットへ掛けてください。外したカバーは、その場で捨ててかまいません。
ほこりが気になるコートやスーツは、通気のある不織布のカバーへかけ替えてください。布ごしに空気が動くので、ほこりをよけながら湿気だけを外へ逃がせます。不織布のカバーは、数百円で売っている薄い袋です。
店から戻ってすぐの服は、たたむ前に1〜2時間ほど風に当てます。仕上げの薬のにおいが残っていることがあり、風に当てるとにおいも一緒に抜けていきます。
防虫剤は4種類。混ぜてよいのはピレスロイド系だけです
服を洗って乾かしたら、次は防虫剤選びです。売り場に並ぶ商品は見た目こそいろいろですが、中の成分は4種類だけです。
| 成分 | におい | ほかの成分と一緒に使えるか |
|---|---|---|
| ピレスロイド系(エムペントリン) | ない | ほかの3つと一緒でも使える |
| パラジクロロベンゼン | ある | ピレスロイド系以外とは混ぜない |
| ナフタリン | ある | ピレスロイド系以外とは混ぜない |
| しょうのう | ある(和だんすの香り) | ピレスロイド系以外とは混ぜない |
種類のちがう成分を同じケースに入れると、成分どうしが溶け合って液になります。服に垂れた液は、しみや変色として残ります。虫は防げても、服のほうに跡が付くのです。
混ざりやすいのは、前の年の残りと新しく買ったものです。同じ引き出しに前の年の分が1個残っているところへ、別の種類を足してしまう。売り場に立っているときに、引き出しの奥に何が残っていたかまでは思い出せません。
家の中で使う防虫剤は、1種類に決めてください。1種類にそろえておけば、混ざることはありません。
成分は、パッケージの裏で見分けます。「ほかの防虫剤と一緒に使えます」と書いてあるものが、ピレスロイド系です。書いていないものは、ほかと混ぜない前提で作られています。
防虫剤は、服の上に置きます
防虫剤を1種類にそろえたら、次は置く場所です。防虫剤を、引き出しの底や服の下に入れていませんか?
ところが、防虫剤の成分が広がる向きは決まっています。防虫剤から出た成分はまわりの空気より重いので、置いた場所から下へ降りていきます。
薬を服の下に置くと、成分は上に積んだ服まで届きません。その結果、いちばん上のセーターだけが食われます。
- 引き出し・衣装ケース … たたんだ服のいちばん上に、平らに載せる
- クローゼット … 吊り下げるタイプを、服と服のあいだのバーに掛ける
- 押し入れのケース … フタを閉める直前に、服の上へ置く
クローゼット用の防虫剤が吊り下げる形をしているのも、成分を上から下へ、服の丈ぜんぶに落としていくためです。
除湿剤は、服の下。上下が逆になります
もうひとつ、同じケースに入れるものがあります。湿気を吸う除湿剤です。
除湿剤は、防虫剤と反対の場所に置きます。除湿剤が下で、防虫剤が上です。上下が入れかわるので、覚えるときにどちらがどちらか取りちがえます。
除湿剤を下に置くのは、湿気が下にたまるからです。押し入れやクローゼットの下のほうは、床に近いぶん空気が動きません。動かない空気は冷え、冷えた空気は水分を抱えきれなくなります。抱えきれなくなった水が、下のほうにたまります。
除湿剤で吸い取りたいのは、下のほうにたまった湿気です。除湿剤を棚の上へ置いても、たまっている湿気のところまで届きません。
下にたまった水分があると、かえる幼虫の数が増えます。防虫剤には湿気を減らす働きがないので、防虫剤と除湿剤を組み合わせて使います。
服をしまったあとは、晴れて風のある日に、押し入れとクローゼットの戸を1〜2時間あけておいてください。中の動かない空気が入れかわって、たまった水分が外へ出ます。冬のあいだに一度やっておくと、春に服を出したときのにおいも軽くなります。
上と下、どちらがどちらか毎年迷います
成分は下へ降りるので薬は上。湿気は下にたまるので吸うほうは下です。降りるものが上、たまるものが下と覚えてください。
有効期間は半年と1年。替える日を衣替えの日にそろえます
置き場所が決まったら、次に決めるのは防虫剤を替える日です。防虫剤のパッケージには、有効期間が印刷されています。有効期間は、半年のものと1年のものの2種類です。
1年のものを選べば、次の年の衣替えの日に薬をそのまま入れ替えられます。年に1回、服をしまうときに新しくするだけです。半年のものは、秋に入れると春先に切れるので、途中でもう一度ケースをあけて替えることになります。押し入れの奥からケースを引き出す作業が、1回増えます。
値段は1個200〜400円ほどです(2026年8月時点の売り場の目安)。ケース1つに何個要るかは入れものの大きさしだいですが、押し入れ用のサイズなら2個。ケース4つで8個なので、年に1,600〜3,200円です。個数の数え方は、このあとの章で説明します。この金額は、ニットを1枚買い直す値段よりずっと少額です。
防虫剤を入れた日は、ふせんに書いてケースの側面へ。次にフタを開けたとき、有効期間があと何か月残っているかがわかります。
衣装ケースは、密閉と通気で選び分けます
衣装ケースには、フタにゴムの縁が付いた密閉できるものと、不織布でできた通気のあるものがあります。売り場では隣に並んでいますが、向いている服の種類が違います。同じ薬でも、不織布のケースに入れると、密閉のケースより早く成分が抜けていきます。
| フタの閉まるケース | 不織布のケース | |
|---|---|---|
| 薬のもち | 外へ逃げないので長い | 布を抜けていくので短い |
| 湿気 | 入った湿気は出ていかない | 布を通って抜ける |
| 向いている服 | ウール・カシミヤのニット | 綿・化繊のかさばる服 |
フタの閉まるケースは、成分が外へ逃げないぶん薬が長くもちます。そのかわり、生乾きの服を入れると湿気の逃げ道がなくなります。入れる前の乾かしが足りているなら密閉、自信がないなら不織布を選んでください。
不織布のケースを使うと、中の薬の減りが早くなります。薬は1年ではなく半年で切れると見ておくと、途中で薬を切らさずに済みます。
圧縮袋に入れてよい服と、入れると形がもとに戻らない服
入れものが決まったら、次に迷うのが圧縮袋です。押し入れの場所を空けるために、冬物をまとめて押し込みたくなる人もいるでしょう。ただし、圧縮袋には入れてよい服と、入れると形がもとに戻らない服があります。分かれ目は素材です。
| 服 | 圧縮袋 |
|---|---|
| 綿のTシャツ・タオル・化繊のトレーナー | 入れてよい |
| ウールのニット | 避ける |
| ダウンジャケット・羽毛ふとん | 入れない |
ダウンと羽毛を圧縮袋に入れない理由は、羽毛の作りにあります。羽毛の暖かさは、細い軸から伸びた枝のあいだにためこんだ空気によるものです。羽毛を強く押しつぶすと、その軸が折れます。折れた羽は、袋から出しても枝が開かないので、ふくらみが戻りません。ふくらみが戻らないぶん、暖かさも落ちたままです。
ウールのニットの厚みは、縮れた毛が絡み合ってできています。ニットを長いあいだ押さえつけると、その縮れが伸びたまま固まります。着たときの形も、編み目の間隔ももとには戻りません。
ウールと羽毛は、押しつぶさずにしまいます。畳んで、ゆとりのあるケースへ入れてください。空気を抜かないことが条件です。
買う前に、ケースの容量を測っておきます
防虫剤を入れる個数は、ケースの大きさで決まります。防虫剤の袋の裏に、「◯リットルまでに1個」と書いてあります。ケースが大きいのに1個しか入れないと、いちばん下の服に薬が届きません。
そのため、買いに行く前にケースの容量を出しておきます。フタの裏に容量が書いてある製品もありますが、書いていなければ外側の3辺をかけ算して出せます。
押し入れ用のケースで多いのは、幅70×奥行40×高さ23センチほどの大きさです。かけ算すると64,400立方センチ。1リットルは1,000立方センチなので、約64リットルになります。
裏面が「60リットルまでに1個」なら、64リットルのケースに入れるのは2個です。小ぶりの薬で「25リットルまでに1個」と書かれていれば、同じケースに3個要ります。
「60リットルまでに1個」の薬を選び、同じ大きさのケースを4つ使っているお宅なら、2個かける4で8個です。1個300円として2,400円になります。メジャーで3辺を測るのは1分で終わるので、売り場に立つ前に測っておけば買い直さずに済みます。
服を出したときに穴を見つけたら、まず穴のまわりを見ます
穴が1つ見つかったら、その1枚だけで済んでいるとはかぎりません。
穴を見つけた服は、すぐ洗濯機へ入れずに、まず明るいところで広げてください。確かめるのは次の3つです。
- 穴のまわりに、白っぽい毛のような抜け殻が落ちていないか。幼虫は育つあいだに皮を脱ぐので、抜け殻はその虫がそこにいた証拠になります
- 同じケースの、ほかの服にも穴がないか。幼虫1匹が服1枚だけを食べて終わることは少ない
- 底のすみに、細かい粉のようなものがたまっていないか。その粉は、かじりかすとふんです
抜け殻や粉が見つかったら、そのケースの服は全部出して洗います。洗えないものは、クリーニング店に出してください。空にしたケースは、水拭きしてから乾かします。すみの溝に卵が残っていると、次の年も新しい幼虫がかえるからです。
小さな穴なら、かけつぎ(穴のまわりの糸を使って編み直す直し方)で目立たなくできます。かけつぎを頼む先は、洋服の直し屋さんです。料金は1か所あたり数千円からかかります。気に入った1枚なら、直して着つづけることもできます。
よくある質問
Q. 防虫剤のにおいが服に残ってしまったときは?
服を風の通るところに半日から1日つるしておくと、においは抜けていきます。パラジクロロベンゼン・ナフタリン・しょうのうは、成分そのものが空気にまざって広がる作りなので、外に出せば薄まります。においが苦手なら、次からは無臭のピレスロイド系を選んでください。
Q. 防虫剤と除湿剤は、同じケースに入れてもかまいませんか?
かまいません。防虫剤と除湿剤は役目が別なので、打ち消し合いません。防虫剤は服の上、除湿剤は服の下という上下だけ守ってください。
Q. 桐のたんすなら、虫よけは要りませんか?
桐の板は、まわりが湿ると水分を吸って、わずかにふくらみます。ふくらんだ板が引き出しのすきまをふさぐので、外の湿気が中へ入りにくくなります。ただし、桐の板そのものに虫を追い出す力はありません。たんすの引き出しにも、服の上に薬を1個置いてください。
Q. 前の年の防虫剤が半分残っています。使い回せますか?
有効期間の中なら使えます。ただし、期間を数えはじめるのは「入れた日」からです。前の年の秋に入れたものは、1年タイプでも次の秋で期間が終わります。見た目に薬が残っていても、成分はもう空気へ出ていったあとです。
Q. クリーニングに出しておけば、虫食いは起きませんか?
汚れが落ちるぶん、虫のえさは減ります。ただしビニールのカバーをかけたまま押し入れへ入れると、内側に湿気が残ります。服が戻ってきたらカバーを外して、虫よけと一緒にしまってください。仕上げの薬に、虫を寄せない働きはありません。
Q. 薬の数を増やせば、そのぶん服を守れますか?
薬は、裏面に書かれた「◯リットルまでに1個」の数まで入れれば足ります。それ以上入れても、ケースの中の薬の濃さが上がるだけで、届く範囲は広がりません。種類の違うものを足すと、溶け合ってしみが出ます。薬の個数を増やす代わりに、服を洗ってからしまう手順を足してください。
まとめ
- 服をかじるのは、親の虫ではなく、卵からかえった幼虫。やることは、卵を産ませないことと、幼虫を寄せつけないこと
- ウールやカシミヤは繊維そのものがえさになり、皮脂や食べこぼしの残った襟と袖口はとくに食われる。化繊でも汚れがあれば穴があく
- 服を洗ってから、芯まで乾かしてしまう。クリーニングのビニールは外す
- 防虫剤は服の上、除湿剤は服の下。混ぜてよいのはピレスロイド系だけ
- ケースの容量を測ってから、「◯リットルまでに1個」の数だけ薬を入れる
夏物をしまう日は、襟と袖口の部分洗いから始めてみてください。
この話で使える便利グッズを、まとめて見る
- 秋の困りごと:衣替えで虫食いが出る
天気予報の湿度は9月も75%のまま。それでも喉が乾くのは、空気1立方メートルに入っている水が19グラムから16グラムへ減るからです。
リンク先は広告を含むページです。